My sweet lover
社長がガバッと身体を起こす。


肩が上下していて、呼吸が乱れているのがわかる。


明らかに動揺している。


私も身体をゆっくり起こした。


黙り込む社長。


この沈黙が苦しい。


「水沢…」


視線を落としたまま、社長が掠れた声を出す。


私の心臓はさっきからずっと激しく鳴りっ放しだ。


「すまない…」


少し呆然としている社長。


私は何を話していいかわからない。


「今のは…、忘れて、くれ」


途切れ途切れの言葉に、私の中で何かがガラガラと崩れ落ちる。


社長は急に立ち上がると、その言葉だけを言い残して自分の部屋に行ってしまった。


ど、うして…?


頭の中がぐちゃぐちゃになる。


忘れてってどういう意味…?


わからない…。


わからないよ、全然。


どうしてキスなんかしたの?


飼ってたペットを手放す気持ちなだけなんでしょう?


それなのに、どうして…?


忘れてなんて、勝手過ぎるよ。


抱きしめられた感触も、触れた唇の感触も、こんなにも強く残ってるのに。


忘れられるわけないのに……!


 
気がつけば、私の頬に涙がつたっていて。


 


 
 

それは、もう止まりそうになかった。

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