My sweet lover
「なぁ、朝日に何された?どこ触られた?」


「えぇっ?ど、どこも触られてないですよ」


「じゃあ、朝日のごめんって何?」


鋭い瞳で私を覗き込む夏樹さんは、いつもの社長モードだ。


答えないと、多分相当しつこいはず…。


「あ、あの、キ、キスを…」


「あぁ~っ?」


ひぃぃ~怖いっ。


思わず夏樹さんの胸元に顔を沈める。


ぷるぷると震えていたら、夏樹さんが腕に力を込めた。


「まぁ…良かったよ。無事で…」


今度は安堵のため息が聞こえた。


もう、怒っていないのかな…?


恐る恐る夏樹さんを見上げると、夏樹さんが頭をそっと撫でてくれた。


「なぁ…」


「はい…」


「もう、どこにも行くなよ」


夏樹さんが子供のような顔をする。


夏樹さんって私より5歳も年上なのに、時々すごく幼く見える時がある。


「ずっと、俺のそばにいて欲しい」

 
どうして、そんな泣きそうな顔なの?


あぁ、そうか。


夏樹さんは大好きなお母さんを失って、大切にしていたリリーちゃんも失って、本気で好きになったありささんも手に入れられず、いつも寂しかったんだ…。

 
夏樹さんは、人一倍寂しがり屋なんだ。


「大丈夫です。私、どこにも行きません。ずっと夏樹さんのそばにいます…」


笑顔でそう伝えると、夏樹さんが目を細めて笑った。

< 278 / 380 >

この作品をシェア

pagetop