My sweet lover
夏樹さんの高級外車が、朝の街を駆け抜けて行く。


夏樹さんとこうして一緒に通勤するなんて、ものすごく不思議な気持ちだ。


「由梨、手前のコンビニで降ろすぞ。

従業員に見られるとマズイし。

それにお前、朝ごはん食べる派だろ?

何か買って来い」


「あ、はい…」


そ、そうだよね。


一緒に通勤してるところなんて、お店の誰かに見られちゃマズイもんね。


しばらくするとコンビニに到着し、私は夏樹さんの車から降りた。


左手を軽く上げると、夏樹さんはすぐに車を走らせてしまった。


なんだろ。


なんとなく寂しい。


やっぱり夏樹さんは、外ではしっかり社長なんだね。


ちょっと複雑だけど、仕事が出来る人だし、そのへんの使い分けは大切だよね。


私はコンビニに入ると、パンとおにぎりをひとつずつ買った。


お店で食べようかと思ったけど、歩きながら食べることにした。(ちょっとお行儀悪いけどね)


お店に近づいた時、沙希とばったり出会った。


「おはよー。あれ?由梨。今日は歩き?」


「あ、うん。一昨日、自転車置いたまま帰ったから」


「えっ、なんで?」


「な、なんでって…」


朝日さんが迎えに来たから…とは言えないし。


「ちょ、ちょっとね。友達が迎えに来て」


「へぇ、そっか。まぁいいや。行こう」


ふぅ。

 
私って嘘が苦手だ…。

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