My sweet lover
「おはようございまーす」


スープの良い香りが立ち込める厨房へと足を踏み入れる。


橋本シェフの指導の下、厨房スタッフはいつも慌しく仕込みをしている。


このスープの香りも、仕込みの姿を見るのも、ちょっと好きだったりする。


「おはよ、水沢」


ボソッと気だるい声に振り返ると、コックコートを着た林さんが立っていた。


「お、おはようございます…」


「この前大丈夫だった?」


「う、うん。ごめんね。色々迷惑かけて」


「いいよ、全然」


お互い、ぎこちなく笑った。


うー、気まずい。


夏樹さんが言ってた。


林さんには私達が付き合ってることがバレたって。


口止めしてるから大丈夫だって言ってたけど、本当に大丈夫なのかな?


「おはようございます」


スーツを着た夏樹さんが、厨房へと入って来た。


夏樹さんが来ると、みんな背筋がピンと伸びるから不思議。


淡々とミーティングを始める夏樹さん。


夏樹さんたら、昨日の夜も……。


はっ、いけない。顔を見てたら思い出しちゃった。


うぅぅ~、私ったら恥ずかしい…。


「えーっと、ちょっとお知らせがあります」


ん?


なんだろう?お知らせって。

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