My sweet lover
「つい先程オーナーから電話があって、突然だが明日こちらに来られることになった」


夏樹さんの言葉に、どよめく厨房内。


久遠オーナーか。


しばらくお会いしてないよね。


もう10ヶ月くらいになるかな。


「そんなに意識しなくてもいい。普段通りにやってくれ」


まぁオーナーは夏樹さんほどピリピリしてないし、優しい方だけど。


そうは言ってもみんな緊張しちゃうよね。

 
 

その日はとても忙しくて、私は必死に店内を走り回った。


早番だったので、久しぶりに自転車で夏樹さんのマンションへと帰った。


そして、夜10時半を過ぎた頃。

 
「ただいま」


夏樹さんが帰って来た。


「おかえりなさーい」


首を長くして待っていた私は、ぱたぱたと玄関に駆け寄った。


「由梨、おいで」


両腕を広げる夏樹さんに、思わずしがみつく。


大きなあたたかい胸に、やっぱりホッとしてしまう。


今日は忙しくて、あれから職場では全然夏樹さんの姿が見れなかった。


夏樹さんが私の頭を撫でている。


ふと冷静になってみると、今の私の行動って、飼い主にしっぽを振って飛び付く犬みたいだった。


やっぱり私はリリーちゃんに似ているのかもしれない…。


「俺、シャワー浴びてくるよ」


「あ、今日はお湯沸かしておきました」


「そうなのか?」


「たまには湯船に浸かってください。やっぱり疲れの取れ方が全然違いますよ」


「由梨はもう入ったの?」


「はい」


「ちぇっ、一緒に入りたかったのに」


「なっ」


そんなの恥ずかしくて、絶対やだ。


「まぁ、いいや。また明日にでも。じゃあ、ベッドで待ってて」


うぅ~。


明日はお風呂沸かすのやめておこう。

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