My sweet lover
「何だよ。イヤなのか?」


ジリと夏樹さんに睨まれる。


「いえ、そんなことはないんですけど…」


なんか改めて彼女ですって紹介されるのって、初めてのことだし緊張する。


「由梨は、俺との未来が見えてないのかな」


「え?」


「たとえば、結婚とか」


「えぇっ?」


け、けけ結婚???


「だって、そうだろ?このまま付き合っていったら、いずれはそうなるのが自然な流れじゃね?」


そ、そうか。


そうだよね。


このままずっと一緒にいれば…。


「どうした…?えっ。ちょっ、泣いてんの?」


ビックリして目を見開く夏樹さん。


「え?俺、変なこと言った?」


夏樹さんの動揺が伝わってくるけど、私の涙は止まりそうにない。


「おーい、由梨ちゃん。泣くなってば…」


よしよしと頭を撫でる手が、あたたかい。


「私、夢だったんです。好きな人と結婚するのが…」


「え?」


「一生そんな日が来ないのかと思ってて。

でも、夏樹さんが言葉にしてくれたから、嬉しくてつい…」


「由梨…」


もっと大きな夢があってもいいのかもしれない。


人が聞いたら、素朴で平凡な夢だって笑うのかもしれない。


だけど私にとっては、それが一番の願いだった。


ずっと、ずっと夢見ていたことだった…。

< 327 / 380 >

この作品をシェア

pagetop