My sweet lover
そして次の日。


ついに久遠オーナーが来る日を迎えた。


夏樹さんはオーナーを駅まで迎えに行くため、少し早めに家を出て行った。


今日私は遅番の予定だったけど、夏樹さんに早出して欲しいと言われ、9時半にはお店に到着した。


オーナーを待っている間、従業員はみんなソワソワして落ち着かなかった。


その中でも一番緊張しているのは、私かもしれない。


私は仕事云々じゃなくて、別の意味で緊張しているんだけど…。


そしてついに、オーナーを乗せた車がお店の駐車場に到着した。


「き、来たわよー」


谷口先輩の合図で、私達は綺麗に並んで姿勢を正した。


ガチャンと、従業員出入口の扉の開く音がする。


そして厨房のドアが開き、夏樹さんの後に久遠オーナーが入って来た。


「おはようございます」


みんなで一斉に挨拶をした。


「おはよう」


にっこり笑うオーナーは、以前と全然お変わりなくて、ロマンスグレーの髪が相変わらずダンディーでカッコイイ。


夏樹さん同様に背も高く、あと数年で60歳を迎えるとは到底思えないほどに男の色気を漂わせている。


「今日は、突然すまないね。

ちょっとお店の様子を見に来たんだ。

いつも通りにしてくれたまえ」


優しく笑うその顔に、一気にみんなの緊張がほぐれていった。

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