My sweet lover
「高級店だし、良いスタッフを揃えたいのに、人材に恵まれてないんだ。

中途採用やら新人を鍛えたりしてるんだけど、根性のないヤツが多くてね」


そう言っておやじがふぅとため息をつく。


確かに、それはあるよな。


きつい仕事だし、その上一流のサービスをしようと思ったら、よく気づくヤツじゃないといけないんだ。


そんなヤツ、そう簡単に見つかるもんじゃない。


「そこで、だ」


「ん?」


「お前の店から、二名ほど異動させようと思ってるんだ」


「は?」


突然の事に、ワケがわからない。


「ちょっ、そんなこと急に言われても困るんだけど。二人も引き抜かれたら、俺の店だって回らなくなる」


無理だ。そんなの絶対。


「んー、でも今日見た感じだと、わりとバランスも良いし、うまくシフトを組めばこなせそうじゃないか」


「いやいや、そんなことないって」


「穴が開いても、それを軌道に乗せるのがお前の役割だろ?」


そんなこと言われてもなあ…。


「-で、誰が欲しいの?」


「うん。一人はな、厨房スタッフの林君だな」


「林?」


「あの子は将来有望かもしれない。今日のまかない食べてみて、そう思った」


へぇ。それはちょっと意外だな…。


まぁ確かに、アイツのまかないはうまいけど。


「ーで、あともう一人がな…」


「…うん」

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