My sweet lover
「おやじ。俺、彼女と結婚したいと思ってる。出来ればすぐにでも…」


夏樹さんは真剣な目で言った。


その姿に、胸の奥がキュンと鳴った。


「結婚?」


夏樹さんの言葉が意外だったのか、さすがのオーナーも驚きを隠せないようだ。


しばらく続く沈黙。


く、苦しい…。


もしかして、ダメなのかな?


こんな大きな会社の社長の一人息子だもの。


それに見合うお嬢様とかじゃないと、ダメだったりとか?


そうだったらどうしよう。


ウチはごくごく一般的な家庭だし…。


「ダメなのか?」


 オーナーの沈黙があまりに長いので、夏樹さんが痺れを切らして言った。


「いや、ダメじゃないよ。お前が選んだ人なら、もちろん認めるけれど…」


認めるけれど…?


その先は何だろう…。


「夏樹。お前、少し席を外してくれないか?水沢さんと二人だけで話したい」


え…?


「ちょっ、何話す気だよ?諦めろとか、身を引けとか言ったら、いくらおやじでも承知しねぇぞ!」


な、夏樹さんっ。


「おいおい、そんなこと言うわけないだろう?

すごいな、お前。

こんなお前、初めて見た。

本気なんだな…」


オーナーの言葉に、夏樹さんの顔が耳まで真っ赤になった。


「ご、ごめん…。席、外すよ。カフェコーナーにいるから」


「ん。またすぐ呼ぶよ」


えー!夏樹さん、行っちゃうの?


不安そうにしていたら、夏樹さんが私の頭をぽんぽんと叩いた。


「大丈夫だ。何があっても、絶対離さないから…」


「夏樹さん…」


にっこり笑って、夏樹さんは社長室を出て行ってしまった。


< 343 / 380 >

この作品をシェア

pagetop