My sweet lover
ミーティングが終わると、私は店内の清掃に入った。


窓を拭いたり、テーブルや椅子を丁寧に拭く。


飲食業だから、清掃には手を抜けない。


次はトイレの清掃に行こうかと歩き出したその時だった。


店内に社長が姿を現し、ドクンと心臓が音を立てた。


どうしよう。


昨日の今日で、なんだかソワソワして落ち着かない。


だけどそんな私には全く目もくれず、社長は沙希の方に真っ直ぐ視線を向けていた。


「柚木」


「はい」


「エスプレッソ持って来て」


「……かしこまりました」


それだけ言うと、社長は社長室へと行ってしまった。


沙希が『なんであたし?』みたいな顔をして、私の顔を見ている。


膨れっ面の沙希は、しぶしぶ厨房へと向かった。


社長、いつもなら私に頼むのに。


どうして今日は沙希に頼むのかな。


一緒に飲んだ事が気まずいのかな。


自分の手の内見せたこと、後悔してるのかもね。


社長って所詮、そういう人なんだ。


心を少し見せてくれて、嬉しかったのに。

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