My sweet lover
「ちょっと、何を大騒ぎしてるのよ」


あたしがあまりに騒いでいたから、谷口さんが厨房から出て来た。


「谷口さん。この人、誰だかわかります?」


「え…?ど、どちら様だったかしら?」


やっぱり、谷口さんも気づいてない。


そうだよねー。こんなに変わってたら…。


「なんとね…、由梨なんだよっ!」


「えぇっ、うそ!まじっ?」


谷口さんが、これでもかというくらいに目を見開いて驚いている。


「谷口先輩。ご無沙汰してます」


由梨は綺麗に頭を下げた。


その動作ひとつひとつがすごく優雅だ。


「やだっ、ホントだ!水沢ーーー!アンタ元気にしてたのーーー?」


「はい。元気にしていました」


「まぁっ、アンタすごく洗練されたわねぇ。さすが高級店に勤めると違うわね。
ーで、今日はどうしたのよ?」


谷口先輩が尋ねると、由梨が綺麗に笑った。


「久遠社長に会いに来たんです。ご報告することがあって」


社長に…?


「社長なら中にいるわよ。入りなさいよー」


あたしがそう言うと、由梨はにっこり笑って、スーツケースを引っ張りながら社長室へと向かった。


その後ろ姿のセクシーなこと。


女の私でも、ドキドキしてしまった。

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