My sweet lover
由梨が関西へ行ってから、2年と10ヶ月が過ぎようとしていた。


俺は久遠グループ東海地域の管理を任され、以前に増して忙しくなっていた。


早いもので、由梨と付き合ってから3年の月日が流れた。


でも一緒にいられたのは最初のほんの数ヶ月だけで、そのほとんどが遠距離だった。


休みの合わない俺達がゆっくり会えるのはお盆休みくらいなもので、お互い仕事も忙しく、電話とメールのやりとりだけの日々が続いた。


時折どうしても会いたくなって、数時間のためだけに大阪へ向かった事もあった。


もともと寂しがり屋な俺が、よくここまで耐えたなと思う。


大阪の店長から由梨の活躍ぶりは聞いていたし、由梨が頑張っているのだから、俺も頑張ろうと自分を奮い立たせた。


だけど…。


もうそろそろ限界だ。


由梨に会いたい。


会いたくて会いたくてたまらない。


ずっとそばに置いておきたい。


一体いつになれば、おやじは俺と由梨を認めてくれるのだろう。


もういやだ。


由梨をさらってしまいたい。


さらって、ずっと閉じ込めておけたらいいのに。


なんて…な。


由梨とお揃いのリングに触れながら、そんなことを思っていたら、コンコンと社長室のドアがノックされた。


「はい…」


しっかりしろ、俺。


こんなんじゃ、おやじの跡なんて継げない。


フッと息を吐いて、ドアを見つめた。


カチャンと扉が開き、そこに顔を出したのは……。

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