猫に恋する、わたし

ー一線を越えたら今までどおりにはいかないし、ケジメをつけないと莉子も辛い思いするだけだよ。


あの時は無我夢中でその先のことを考える余裕なんてなかったけど、まさかこんなに辛いと思わなかったな。

あのベットで、今夜は谷口さんと抱き合うんだ。

そう考えたら、頭がおかしくなってしまいそう。




「ねえこのCDってお姉ちゃんの?」


窓からタバコの灰を落としていた彼の手が止まる。


「お姉ちゃん、この曲好きだったよね。わたしもよく借りて聞いてたから」


間が空いた。


「…知らねえ」


わたしはプレーヤーからCDを取り出して言った。


「わたしからお姉ちゃんに返しておこうか?」

「…」

「返しておくね。お姉ちゃん、探してたから」


彼の返事を待たずに、わたしはCDをケースに入れて鞄の中に入れる。

その時、ケースに入っていた歌詞カードに彼の字がちらりと見えたけど見なかったふりをした。


「あの女…」


ぽつり、と彼が呟く。
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