猫に恋する、わたし
Chapter.2
思いがけないKISS
彼の手はとても温かくて、
冬の寒さを忘れさせてくれる魔法のような手だ。
「ねえ」
わたしの手をぐいぐい引っ張って、前に進む彼。
「ねえ伊織君」
「んだよ」
「今、いないの」
「なにが」
「今、お姉ちゃんいないの」
「…は?」
彼の手が離れた。
もう少し繋いでいたかったな、なんてがっかりしながらわたしは答えた。
「お姉ちゃん、今結婚式の打ち合わせで栃木に行ってるの」
間が空く。
そして彼は大きくため息を吐いて、その場にしゃがみ込んだ。
「んだよ、人がせっかく…。お前、そういうことは早く言えよ」
「ごめん…なんか言い出せなくて」
だっていきなりわたしの家に向かうんだもん。
チッ、と舌打ちの音。
「あー、萎えるわ」
そういって近くにあったスターバックスでホットコーヒーを頼む彼。
わたしがじっと見ていると、嫌々ながら二人分買ってくれた。
テラス席に腰掛けて、目の前を歩く人々を眺める。
彼が買ってくれたホットコーヒーは冷えた体によく染み渡った。