猫に恋する、わたし
わたしはずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「会ってどうするつもりだったの?」
しばしの、無言。
彼は視線を落として答えた。
「…ケジメ、つけるつもりだった」
夕焼け空にコーヒーの湯気がふわふわと立ちのぼる。
「でもよく考えたら、向こう側にしたら迷惑かもな。俺の自己満足かもしれねえ」
いつの間にか消えていた、あのピンキーリング。
彼がお姉ちゃんとどうするつもりなのか分からない。
でもーーーー「いい加減、立ち止まってないで前を歩かなきゃな」
あの言葉の意味はたぶん、わたしにも言えることだ。
「茜さん、向こう行くのか?」
「うんそう」
「そっか、栃木か」
少し寂しそうに、少し悲しげに、彼は呟いた。
「…遠いな」