猫に恋する、わたし

「あの、この子に何の用ですか」


と菜々緒が間に割り込む。


「ううん別に。ただどんな子なのかなってちょっと話してみたかっただけ」

「…」

「食堂で羽生君があなたと一緒にいるの見かけて、でも」


麗美先輩はパーマのかかった長い髪をかき分けながら、おもむろにわたしを見下ろした。


「なーんだ、近くで見るとあなた冴えない女の子だね」



わたしは察知した。

もしかして、この人ーーー。



「羽生君には不似合いだから、身の丈にあった男を選んだほうがいいんじゃない。ほら、さっき話してた宮川智充君とか。あの子もかわいい顔してるわよね」



、、、、、、
要は、彼に近づくなってこと。

この人はわたしに警告してるんだ。




「何それ、なんであなたにそんなこと言われなきゃいけないんですか。羽生君の彼女でもないくせに」


菜々緒の言葉が癇に障ったのか、麗美先輩は顔色を変えた。

眉間に皺を寄せて、わたしと菜々緒を睨みつける。


「ガキが生意気言わないでよ。とにかく羽生君にあなたはふさわしくないから。これ以上羽生君に近づいたら何するか分からないよ」


それまでの柔らかい口調が嘘のように豹変した。

< 64 / 104 >

この作品をシェア

pagetop