猫に恋する、わたし
「どんなに頑張ったって、あなたは羽生君にとって遊びでしかないんだから」
「…ッ」
「菜々緒、だめ!」
麗美先輩に殴りかかろうとした菜々緒を慌てて止めに入る。
「ちょっとどいて!この人、莉子をバカにしてるんだよ」
「いいの!わたしは大丈夫だから」
「でも…」
「もうほっとこ、ね」
なんとかなだめるも、菜々緒は納得いかない様子だった。
だって、彼のことを好きな女の子は数え切れないほど。
いちいち腹を立ててたら、彼についていけない。
だからわたしは何を言われても我慢してみせる。
わたしが菜々緒の手をとってトイレを出ようとしたその時、突然、頭の上から冷たい感触が走る。
「先輩を無視したオシオキ」
気が付けば、わたしは水をかけられて全身ずぶ濡れになっていた。
バケツを投げる音が響く。
「何するか分からないって言ったでしょ。ふふ、だっさ」
わたしをあざ笑う声。
突然の出来事に、わたしと菜々緒はトイレを出ていく麗美先輩の後ろ姿を呆然と見つめることしかできなかった。