猫に恋する、わたし
とたんに舌を出して、彼は口をパクパク動かした。
ハ?あっ、バ。
バア…
バアカ?
、、、、、、、
あっ、バーカね。
わたしがむくれた顔をすると彼はくくっ、と肩を揺らした。
あの日以来、唯一変わったことといえば彼がよく笑ってくれるようになったこと。
わたしは嬉しくて、その度に脳内で何度もシャッターを切るんだ。
終始、わたしと彼のやりとりを見ていた菜々緒が頬杖をついて言った。
「なんだ、やっぱりラブラブじゃん」
どこが、とわたしは突っ込む。
学校の中では彼とわたしは付き合っていることになっている。
だから彼もわたしも彼氏彼女のフリをしているだけ。
「また羽生伊織がなんか言ってるよ」
大雑把な手の動きのジェスチャー。
”きょうは、てんき、いいから、メシ、うえで、くうぞ”
わたしが頷くと、また彼は笑った。
…重症だ。
、、
フリだと分かっていても、彼とこうした時間が過ごせるのはやっぱり嬉しい。