猫に恋する、わたし
昼休み。
購買部で二人分のパンを買い、彼が待っている屋上に向かう途中でスマートフォンの着信音が鳴った。
待ち受け画面に宛先のアドレスが表示されて、わたしはどきり、とした。
《しね》
それはしばらく途絶えていたあのメール。
ただの迷惑メールだったんだと安心していた矢先に、久々に見たこの二文字はショックを覚えた。
「邪魔」
突然、後ろから押されて、足がよろける。
驚いて振り向くと、そこには学級委員の日々野さんを先頭にクラスの女子グループがわたしを見下ろしていた。
「廊下の真ん中で突っ立ってられると迷惑なんだけど」
「ご、ごめ」わたしは慌ててわきに寄る。
そして、その横を通りながら日々野さんは言った。
「さすが人の彼氏盗っただけあって、周りの迷惑考えないんだね」
ズキ、と心が痛む。
泥棒猫、と小さな声が聞こえた。
「泥棒猫は表を歩くな」
笑い声が飛び交う。
わたしは震える手でスマートフォンをぎゅっと握りしめた。
忘れてはいけないのは、わたしを快くよく思っていない人はたくさんいることということ。
こうなることは覚悟していた。
だから、これぐらいでめげたりなんかしない。