猫に恋する、わたし
二時間目の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
窓際の一番前がわたしの席。
この時間になるとわたしはいつも向かいの校舎の屋上に目をやる。
ゆらゆら。
青空に似つかわしくない灰色の煙が金網の奥に見えた。
配られたプリントを回す際に一番後ろの席を確認してみると、予想通りの空っぽ。
「羽生(はにゅう)。羽生伊織ー。またあいつサボりか」
現国教師の相田先生がボサボサの髪を掻きながら大きくため息を吐いて、出席表にバツを書く。
「誰かあいつに伝えとけー。放課後職員室に来いってな。ま、どうせ来ないだろうけどな」と諦め口調。
彼はサボり魔の常習犯。
それでも強く注意しない理由は彼の成績が全教科学年トップという文句のつけようがない優等生だから。
屋上に視線を移すと、いつの間にか灰色の煙は消えていた。