嗤うケダモノ
卒業間際の高校も、進学が決まっていた地元の大学も、全て放り出して私は上京した。
まぁ…
ぶっちゃけ、あれ以来腫れ物に触るように接してくる両親や兄弟たちがいる家に、居づらかったってのもあるンだケドね。
故郷を離れてからは、驚くほど順調に物事が進んだ。
当初こそ風変わりなホステス扱いで接してくるバカもいたが、年を追うごとにそんなコトもなくなった。
当然ダヨネー。
ほんとに視えるンだもん。
ほんとに解決できるンだもん。
このチカラと人の心を操る術を巧みに使い分け、数年のうちに私は警視庁上層部や会社役員、果ては国会議員までも顧客に抱える売れっコ霊能者になった。
この美貌が一役買ったのカモ☆
なんて、自画自賛しておこう。
目ぇ逸らすなよ。
呪うゾ。
なにはともあれ、私は財力とステータスと、チヤホヤしてくれる男たちを手に入れた。
そんな夢の霊能者生活に転機が訪れたのは、23才の時だった。
夏が近づく頃、曰く付きの山にダムを建設するとかで、私は地鎮を請け負うことになった。
いつも通りの『気のせい』案件だったため、チョイチョイっと祈祷ゴッコをして。
尤もらしいコトを言って現場の人間を安心させて。
ガッポリ大金をせしめて。
サクっと仕事を終わらせた私は 山の裏側にあるという秘湯に向かっていた。
わざわざド田舎まで足を伸ばしたンだし、楽しみもなくちゃ。