嗤うケダモノ
「おはよう、タニグチくん。」
目元を和ませた日向は、セミロングの黒髪を揺らして軽く会釈した。
だが、いつもソレだけ。
特に親しい間柄というワケではない。
しかし今朝は…
「ねぇ、木崎さん。」
背を向けて自分の席に歩きだした日向を、タニグチくんが呼び止めた。
振り向いた日向が首を傾げる。
「ナニ?」
「そのー… 元気?」
「え? うん… うん?」
ナニ聞いてンだろね?
元気だから学校来てンの。
病気だったら家で寝てるよ。
日向が怪訝な顔をすると、タニグチくんは気まずそうに笑って頭を掻いた。
「そーゆー元気じゃなくて…
ナニカ困ってるコト、あるンじゃないかなーって。
例えば… 人間関係とか?」
(あー… そーゆー…)
彼がナニを言いたいのか気づいた日向は、唇に薄い笑みを浮かべた。
彼は、日向を取り巻く現状を心配してくれているのだ。
なんてイイヒト。