嗤うケダモノ

ナニもソコまで怒らなくても…


「や、先輩?
別に実害はないデスヨ?」


「はぁ?
俺以外のヤツがヒナの寝顔見てンだよ?
実害じゃん。公害じゃん。
災害じゃ─────んんん?」


あらら。
言ってる本人が、ワケわかんなくなってるよ。

笑いを噛み殺してプルプル震える日向を見て、由仁はぷぅっと頬を膨らませた。


「笑うしー。
俺、真剣なのにー。」


「わかってます、スミマセン。
でもなんか… フフっ
話したら、たいしたコトじゃないような気がしてきたってか…
怒ってる先輩見てたら、全っ然たいしたコトじゃないような気がしてきたってか?」


両手を口元に当てて、日向が笑う。
楽しそうに、笑う。

彼女の笑顔を見て、膨らんでいた由仁の頬も緩んだ。

抱えていたモノを吐き出して、少しは気が楽になったカナ?

暗い顔なんて、らしくない。
元気で、勝ち気で、瞳が強い光を放っていてこそ、彼女だ。

コレで、たまーに尻尾振って甘えてくれればなー…


「まぁ、心配はないじゃろ。
今のヒナちゃんにはナニも憑いとらんよ。」


聞こえてきた空狐の声が、日向の笑顔に拍車をかけた。

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