嗤うケダモノ
画鋲はなかったが、靴箱は手紙で溢れていた。
ドレもコレも、内容は謝罪とご機嫌取り。
…新手のイヤガラセ?
日向は苦笑しながら、紙束を革製のスクールバッグに押し込んだ。
「木崎さん。
今、帰り?」
後ろから声を掛けられ、振り返ると…
「うん。
タニグチくんはまだ部活?」
昇降口にジャージ姿のタニグチくんが立っていた。
確か彼は… サッカー部?
ん? バスケ部だっけか?
まぁ、どーでもイイ。
腰を屈めてローファーを履く日向に、タニグチくんが躊躇いがちに近づく。
「俺も、もうあがり。
‥‥‥木崎さん、この後」
「ヒーナー。
俺、イイコト思いついちゃったー。」
コッチには躊躇いなんてナイ。
さらに言えば、遠慮もナイ。
二年生の靴箱がある通路から出てきた由仁が、あっという間に距離を詰めて日向の手からスクールバッグを奪い取った。
「今日も送るワケだしー。
そのまま俺がヒナんチに泊まっちゃえばイイんじゃーん?」