嗤うケダモノ
「先輩…
ソレ、餌が入った檻に猛獣を解き放つも同義なンじゃ?」
「お。ヒナも言うネー。
でもソレ、杏子さんの戯言だから。
俺を信じて身も心も委ね…
あれ? ダレー?」
本人にのみ都合のイイ思いつきにニンマリ笑いながらオヤジ臭いセリフを吐いていた由仁が、言葉を切った。
彼の視線の先には、居心地悪そうに俯くタニグチくん。
「友達ー?」
「あぁ、同じクラスのタニグチくんです。」
日向も、思い出したようにタニグチくんを振り返った。
って…
冷たいな、おい。
「ごめん、タニグチくん。
ナンダッケ?」
「…
ううん。
なんでもないンだ。」
会話の続きを促した日向に軽く手を振って、タニグチくんは笑顔を見せた。
「木崎さん、また明日。」
絵に描いたような、キラっキラの好青年スマイル。
なのにソレを見た由仁の目は一瞬大きく見開かれ、すぐに鋭く細められた。
そして、ナニか思案する様子で下唇を撫でて…