嗤うケダモノ
肆
ごはんも食べマシタ。
お風呂にも入りマシタ。
さぁ、そろそろオヤスミの時間デスヨ。
浴衣姿の由仁が、肩に掛けたタオルで濡れた髪を拭いながら自室に入る。
するとちゃぶ台に座っていた空狐が、待ち構えていたかのように勢いよく振り向いた。
「おぬし、視えておったのか?
わかっていて、やったのか?」
ん? ナニが視えてたって?
空狐の問いには、重要なキーワードが抜けている。
なのに由仁は造作なく答える。
「まーねー。
てか、ジーチャンもアソコにいたンだー。」
艶然と微笑んだ由仁は空狐が乗ったちゃぶ台の前を通過して、格子屏風の向こうのベッドに腰を下ろした。
風呂上がりで、火照ってて、髪が濡れてて、浴衣の前がはだけてるとか…
無駄にエロいな、おい。
そーゆーのは女子がすべきだと…
なんて私情は置いときマシテ。
「ねー、ジーチャン?
俺も、杏子さんみたいに視えるようになったの?
九尾のチカラってヤツー?」
今度は、由仁が空狐に問い掛けた。
杏子には視えていて、由仁には視えなかったモノ。
つまり、抜けたキーワードは…
霊。