嗤うケダモノ


ごはんも食べマシタ。
お風呂にも入りマシタ。

さぁ、そろそろオヤスミの時間デスヨ。

浴衣姿の由仁が、肩に掛けたタオルで濡れた髪を拭いながら自室に入る。

するとちゃぶ台に座っていた空狐が、待ち構えていたかのように勢いよく振り向いた。


「おぬし、視えておったのか?
わかっていて、やったのか?」


ん? ナニが視えてたって?

空狐の問いには、重要なキーワードが抜けている。

なのに由仁は造作なく答える。


「まーねー。
てか、ジーチャンもアソコにいたンだー。」


艶然と微笑んだ由仁は空狐が乗ったちゃぶ台の前を通過して、格子屏風の向こうのベッドに腰を下ろした。

風呂上がりで、火照ってて、髪が濡れてて、浴衣の前がはだけてるとか…

無駄にエロいな、おい。

そーゆーのは女子がすべきだと…
なんて私情は置いときマシテ。


「ねー、ジーチャン?
俺も、杏子さんみたいに視えるようになったの?
九尾のチカラってヤツー?」


今度は、由仁が空狐に問い掛けた。

杏子には視えていて、由仁には視えなかったモノ。

つまり、抜けたキーワードは…

霊。

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