嗤うケダモノ

「どうしてあんなコトをした?
確実に怒らせてしまったぞ。
あの様子じゃ、今夜はヒナちゃんの元ではなく、ココに…」


空狐は険しく顔を歪めてボヤいた。

あら?
生霊どころか、空狐まで怒らせちゃった?


「だからだよー。
わざと嫉妬煽って、俺ンちにご招待したの。」


ベッドの上で足をバタつかせながら、由仁はノンキに答えた。

由仁が日向を抱き寄せた時、タニグチくんは戸惑っていた。
だが、生霊は眉を吊り上げた。

由仁が日向にキスした時、タニグチくんは赤面して逃げた。
だが、生霊は振り返り、いつまでも由仁を睨んでいた。

憎悪の炎を灯した瞳で。

きっと今夜はココに来る。
ひょっとしたら殺意を抱いて。

それでも、ね。


「無自覚で記憶が残ってナイにしたって、ヒナの寝顔覗き見してるとか許せないしー。」


明らかに不貞腐れた由仁の声。

だが表情は見えない。

由仁と空狐は、屏風に隔てられている。


「わかっていて呼んだのか?
なんというコトを…
おぬし、いったいどうするつもりじゃ?」


「んー… どーしよっカナー。
あ、ジーチャンは手ェ出さないでネー。」

< 156 / 498 >

この作品をシェア

pagetop