嗤うケダモノ
夜が更け、闇が深くなる。
目を閉じた由仁は、その闇が重さを増してゆくのを全身で感じていた。
なんだか身体が動かないナー。
コレが金縛りってヤツかナー。
下腹部に意識を集中させて呼吸を整えた由仁は、伏せていた睫毛をゆっくり上げた。
ハイ、さっきぶり。
身体に馬乗りになって顔を覗き込んでくるタニグチくん。
なんか昼間視た時より、輪郭がハッキリしてるね。
目が殺気だっててコワいよね。
必死でヤりに来たンだネー。
でもゴメン。
ヤローに押し倒される趣味はナイから。
丹田に力を込めて金縛りを解除すると同時に上半身を起こした由仁は、微妙に面食らった顔をするタニグチくんを…
「イイ加減、目ェ覚ませ。」
ボコっ
殴りつけた。
…
え?
オバケに物理攻撃って、アリ?
ソレが九尾のチカラってヤツ?
え?
でも、ゴールデン・アイになってナイよ?
黒目のままだよ?
「…
生霊って、殴れたンかの?」
誰しも思うコトは同じ。
黙って様子を見守っていた空狐は、目を丸くして呟いた。