嗤うケダモノ

ベッドの上に立ち上がり、腕を組んで顎を反らした由仁が、意気揚々と声を張り上げる。


「『愛ある拳は防ぐすべなし』って、ガ●プが言ってた!」


「…
なんと。
由仁、おぬし覇気使いじゃったか。」




んなバカな。

ユラリと揺れながら浮かび上がったタニグチくんは、満面に怒りを滲ませて由仁を睨みつけた。

まだヤる気デスネ。
ソーデスネ。

伸びてくる手を躱した由仁が、もう一度、カウンターぎみにタニグチくんを殴り飛ばす。

今度こそタニグチくんは部屋の隅に転がった。


「目ェ覚ますまで何度でも殴ンゾ、コラ。」


指をパキパキ鳴らした由仁が、倒れ込むタニグチくんに歩み寄る。
タニグチくんを見下ろす彼の瞳もまた、怒りを滲ませていた。


「しっかり起きて、自分のしでかしたコトを考えてみろ。
君、ヒナが好きなンでショ?
好きなコを怖がらせるなんざ、男のするこっちゃねーだろが。」


殴られた頬を手で押さえたタニグチくんが、ゆっくりと顔を上げる。

焦点の定まらない目が、ボンヤリと由仁を捉えて…

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