嗤うケダモノ
『…
あ… 俺 は‥‥‥』
夢の中にいるような頼りない口調で、タニグチくんが呟いた。
その瞳に、理性の光が戻ってくる。
「目ェ覚めた?
もーヒナの部屋の覗き見は禁止だから。
次やったら、目潰しの刑だからネー。」
頬を膨らませる由仁を見上げたタニグチくんの、泣き出しそうに歪んだ顔が透けていく。
透けて。
透けて。
闇に、溶けた。
「…
帰ったか。
己を取り戻したようじゃの…」
タニグチくんが溶けていった空間を見つめながら、空狐が言った。
なんてことだ。
こんな顛末は予想していなかった。
そもそも…
「おぬし、どうして九尾の妖力を使わなんだ?」
あっ!写真撮ンの忘れたー、なんて頭を抱える由仁を見上げた空狐が、どこか気の抜けた声で訊ねた。
「へ?
どーしてって、そりゃ…」
そんなの、決まってンじゃん。