嗤うケダモノ


「ヒーナー、行こー。」


放課後の昇降口。

靴を履き替えた日向の手からいつものようにスクールバッグを取り上げようとした由仁が、ふと視線を上げた。

そして、頭を掻きながら再び日向を見下ろして…


「忘れ物しちゃったー。
バイクのトコで待っててくれる?」


ニコリと微笑んだ。


「わかりました。」


「ごめんネー。」


なんの疑いもなく駐輪場に向かう日向の背中を見送ってから、由仁も踵を返す。

三段ほどの短い階段を上って。
廊下を曲がって。

柱の陰には…

ハイ。
昨夜ぶり、タニグチくん。

由仁が日向を先に行かせたのは 忘れ物をしたからなんかじゃない。

少し離れた場所から、タニグチくんが見ていたから。

今日は日向ではなく、物言いたげな目で由仁を見つめていたから。

やっぱ、ビンゴ。
フイと姿を消した彼は、ココで待っていた。


「俺になんか用」


「スミマセンデシタ!」

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