嗤うケダモノ
なのに…
「そんなコワい顔しないのー」
「痛っ?!」
ハイ、デコピン炸裂。
伸びてきた由仁の長い指に思いきり額を弾かれたタニグチくんは、両手で頭を押さえて後退った。
「なにムズカシーコト考えてンのか知ンないケドさー。
俺は、ヒナがヤな思いしてなきゃソレでいーの。
それに…」
顎を反らして唇を歪めた由仁が 流し目ぎみにタニグチくんを見下ろす。
「告げ口でヒトの足引っ張ンのも、男のするこっちゃねーでショー?」
「は…」
頭を抱えたまま、タニグチくんは絶句した。
なんとも艶かしいドヤ顔もあったもんだ。
驕慢な美姫と見紛うばかりの仕草と表情。
なのにそのセクシーな唇が語るのは『男気』について。
そう言えば昨夜も『男』について説教食らって、殴り飛ばされたっけ。
足元に視線を落としたタニグチくんは、苦い笑みをこぼした。
「…
久我先輩って、見た目ほど女々しくないンですね。」