嗤うケダモノ

「ん? うん、そりゃ…
あれ?
俺、毒吐かれたの?
コレ、ディスられてンの?」


男前って意味だよ。
悔しいから、言わないケド。

敵わねェなぁ‥‥‥

不満そうに下唇を突き出す由仁に向かって、タニグチくんはもう一度深々と頭を下げる。


「先輩、ご迷惑おかけしました。」


顔を上げた彼は笑っていた。

好青年の見本のような、晴れやかな笑顔で。


「安心してください。
木崎さんが不眠になるようなコトは、もうありませんから。」


「…
そか。
よかったー。」


由仁も、艶やかに笑った。

じゃ、ヒナが待ってるから、と手を振って走り去る由仁の背中を、タニグチくんは見送った。

失恋は確定。

告って断られたワケでもないのに、こりゃキツいわ。

相手が悪かった…

いや、そうじゃない。
感情を爆発させて好きな人に迷惑をかけるほど幼い自分じゃ、相手にもされない。

もっと大人の男になろう。
好きな人を守れる男になろう。

あの人のように。

全てはそれからだ。

< 166 / 498 >

この作品をシェア

pagetop