嗤うケダモノ
「ん? うん、そりゃ…
あれ?
俺、毒吐かれたの?
コレ、ディスられてンの?」
男前って意味だよ。
悔しいから、言わないケド。
敵わねェなぁ‥‥‥
不満そうに下唇を突き出す由仁に向かって、タニグチくんはもう一度深々と頭を下げる。
「先輩、ご迷惑おかけしました。」
顔を上げた彼は笑っていた。
好青年の見本のような、晴れやかな笑顔で。
「安心してください。
木崎さんが不眠になるようなコトは、もうありませんから。」
「…
そか。
よかったー。」
由仁も、艶やかに笑った。
じゃ、ヒナが待ってるから、と手を振って走り去る由仁の背中を、タニグチくんは見送った。
失恋は確定。
告って断られたワケでもないのに、こりゃキツいわ。
相手が悪かった…
いや、そうじゃない。
感情を爆発させて好きな人に迷惑をかけるほど幼い自分じゃ、相手にもされない。
もっと大人の男になろう。
好きな人を守れる男になろう。
あの人のように。
全てはそれからだ。