嗤うケダモノ

「ごめん、おねぇ。
今日はたとえゴジラが襲来しても起きないから。
このまま枕と心中させて。」


「ゴジラなんかじゃねーよ!
この世の終わりだよ!
お母さんは石になっちゃったし お父さんなんか枯れ木だよ?!」


「はぁ? ナニソレ?」


「フェロモンだだ漏れの美形が来てンの!
アンタのカレシだって言って…
なんの冗談? バツゲーム?」


「っ??!!」


枕を放り出した日向が飛び起きる。

そりゃ、ゴジラどころの騒ぎじゃねーわ。
全身猥褻物の襲来だ────!

日向はドアの前で喚く姉を押し退けて疾走した。
階段をワンステップで飛び降りた。

目標地点まで10秒。
新記録デス、オメデトウ。

ゴールである玄関には、口を開けたまま時が止まった母親。
干物と化した父親。

そして…


「あ、ヒナー。
おはよー。」


艶やかに微笑む、愛しの全身猥褻物がいた。

ネイビーのPコートと、絶妙に色落ちしたジーンズ。
コートの裾からチラリとはみ出た白いシャツ。

今日もナチュラル系デスネ。
なのに、憎らしいほどキマってマスヨネー。

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