嗤うケダモノ
壱
脚立を肩に担いで部室の扉を開けた由仁は、その光景を目にして口元を綻ばせた。
ソコにいる人は…
やっぱり日向。
でもって、やっぱり寝てる。
由仁は足音を忍ばせながら、デスクに突っ伏している彼女に近づいた。
(カーワイー…)
白く滑らかな頬。
そこに影を落とす長い睫毛。
誘うように薄く開いた唇。
あたたかな午後の日差しを浴びて眠る、愛しのバニーちゃん。
吸い寄せられる。
目が離せない。
晴れて『カレシとカノジョ』という関係になったにも関わらず 相変わらず日向はなかなか隙を見せてくれない。
距離を縮めようとすると、真っ赤になって逃げてっちゃう。
まぁ、ソコが可愛いンだケド。
だが、今ならガン見し放題☆
由仁は床に膝を落とし、安らかな寝息が感じられるほど顔を寄せて日向を見つめた。
震える瞼。
微かに漏れる吐息混じりの声。
あー…
起きちゃうカナ。
残念。
「ん‥‥‥ 先輩?」
「おはよー、ヒナ。」
由仁はまだ寝ぼけ眼の日向のふっくらした小さな唇に、チュっと軽く音を立ててキスをした。