嗤うケダモノ
「んー… 九尾じゃねーよ?
俺はもう、随分前から俺だし。
強いて言うなら『九尾の記憶が残ってる俺』ってトコー?」
少し考える素振りを見せた由仁が、下唇を撫でながら言った。
九尾じゃない。
本当に由仁だ。
姿も、話し方も、その癖も。
「そーなの?
じゃ、初めましてじゃないネー。」
「そーそー。
二人とも『俺』だしネー。」
また二人同じ顔でクスクス笑ってから、由仁は由仁の隣に腰を下ろした。
なんつーか…
ややこしいわ、おまえら。
書いてるコッチがゲシュタルト崩壊しそーだわ。
「ねェ、ありがと。」
「ナニがー?」
えとね、前のが由仁。
後のが元・九尾の由仁。
…たぶんね。
「俺が生まれた時の話。
君に憑かれたってより、君に助けてもらったってのが、正解なンでショ?」
「んー…
そんなコトもあったカナー…
てか、どーでもイーよ。
君の中ってか、俺でいるのってか、なんかあったかくて心地好いンだよネー。」
「‥‥‥そか。」