嗤うケダモノ

杏子の話を聞いてから、ずっと気になっていたのだ。

色々な誰かの色々な犠牲の上に 自分の命があるコト。
その色々な誰かは、どうして色々な犠牲を払ったのカナってコト。

後悔していないのカナってコト…

まーとりあえず、ココにいる『俺』は『俺』でいるコトを嫌がってはいないようだから、少しは気が楽になった。

由仁は安堵の溜め息を吐き出して、薄く微笑んだ。

だが…


「そんなコトより、君さー…」


隣の由仁は、なんだかご機嫌ナナメ。

眉根を寄せて由仁を睨んだ。


「『天井裏』はダメ。
アレはやっちゃダメー。」


「えー?
ダメなの? 降霊術。」


「他のはスキにすればイイよ?
どーせダレも寄りつかないケドネー。」


「あー… そーなの?」


会いに行っても逃げられちゃうならいっそ呼んでやれ、なんて考えたのに…

無駄デスカ。
ソーデスカ。

トコトン幽霊とは縁がナイみたい。

由仁はガックリと肩を落とした。

< 191 / 498 >

この作品をシェア

pagetop