嗤うケダモノ

もう話はおしまい、とばかりに由仁は立ち上がった。

って、待って。
なんかソレ、とんでもなく重要な気がすンだケド?

もー少し詳しく…


「余計なコト考えてないで、幸せになンなきゃなンねーの。
君はってか、俺はってか…
俺らは。」


「え…」


引き留めようと伸ばした指先が 由仁の言葉でピタリと止まる。

戸惑いに瞳を揺らす由仁を見下ろした由仁が、穏やかに微笑んだ。


「大切な人たちの幸せを信じて 彼女は眠ったンだから。」


消える。

白い世界が。

ちょ… 待てって、まじで。
誰なの? 彼女って。
誰なの? チヅコって。

消える、消える。

とても自分のモノだとは思えない、優しい笑顔が。

『誰か』の、胸をしめつけるほどの優しい思いが。

全て、消えて‥‥‥

いつものベッドから身を起こした由仁は、いつもの部屋にあるいつもの鏡に見慣れた自分の顔を映した。

そっと頬を抓ってみる。

夢は終わってしまったようだ。

不思議で、ややこしくて、限りなく優しい夢だった。

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