嗤うケダモノ
さて数日が経過しマシテ。
街はいつもより華やいで。
楽しげなメロディーが絶え間なく響いて。
様々な色の光が瞬いて。
今夜は聖なる夜デスYO!
人でいっぱいの水族館は、実にキレイだった。
たぶん、日向が一緒だからだと思う。
慣れないフレンチレストランも 実に美味しかった。
たぶん、日向が一緒だからだと思う。
ほんとは、ネ?
そもそも、ネ?
人混みも、寒いのも、好きじゃないのネ?
なのに、こんなに楽しい。
爪先がジンジンするほどの寒さの中、繋いだ彼女の手のぬくもりを感じているだけで。
人で溢れる街を、傍にいる彼女を振り返りながら歩いているだけで。
魔法にかかったみたいだ。
人の流れに逆らって。
人工の明かりで昼のようになった街を抜けて。
二人はバイクを停めた駐輪場に戻ってきた。
「先輩、今日はありがとうございました。」
微笑んだ日向が、ペコリと頭を下げる。
ナニ言ってンの?このコ。
まだ帰さねェよ?
むしろココからがメインイベントなンだから。
でもソレは内緒にして。
由仁は黙って日向にヘルメットを手渡した。