嗤うケダモノ
深い溜め息を吐いた由仁は、少しだけ視線を上げて彼をハメた二人の女子を見た。
片方は、沈痛な面持ちで睫毛を伏せている。
もう片方は、射抜くような真摯な眼差しで由仁を見つめていて…
…
あぁ、もう…
降参だよ、バニーちゃん。
その瞳で見つめられちゃ、ネ。
「…
とりあえず、そのメール見せてもらえるー?」
苦笑いを浮かべた由仁がそう言うと、ヨコタさんの目が喜びに輝いた。
だけど、ごめんね?
視界には入っちゃいるケド、ちゃんと見ていない。
由仁が見ているのは、ヨコタさんの隣に座る日向だけ。
全く関係ないハズなのに、自分のコトのように嬉しそうに微笑む日向だけ。
ほんと、このコは…
その眼差しひとつで。
その表情ひとつで。
人を振り回してるコト、わかってンのカナ?
こーゆー人助けみたいなの、ほんとはキャラじゃナイのに。
心底めんどくさいのに。
(覚えてろー。
唇塞いで、舌絡めた挙げ句ハミハミして、窒息寸前まで追い込んでやるからナー。)
由仁は妖艶な仕草で唇を撫でてから、ヨコタさんが差し出す携帯を受け取った。