嗤うケダモノ

憧れのペガサス(偽)に見つめられて赤面しながらも、部長はなんとか質問に答える。


「えと…// その…//
三月にある、選手権のコトだと思うが…」


「あー、春の武道館ってヤツ?
おっきー大会だヨネー。
‥‥‥欠場すンの?」


特に抑揚のない、世間話をしているかのような由仁の声。

だが彼の最後の一言で、部長は顔色を変えた。


「バカなコトを言うな!
みんな、武道館に向けて精一杯練習してるンだ。
欠場なんてあり得ん!」


「そー?
で?
捻挫が治らないAくんって?」


厳しい表情で語気を荒らげる巨体を気にも留めず、由仁は涼しい顔で別の質問を投げかける。

てか、温度差激しすぎンだろ。


「Aはソコの…」


「俺です。」


部長に視線を送られて手を上げたのは、窮屈そうにソファーに腰掛けた一年男子だった。

なーるほど。
だから座ってたってワケ。

由仁がチェアを回して彼に身体を向ける。


「捻挫、治ンないンだ?
大変だネー。
大会、出たくないンじゃなーい?」

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