嗤うケダモノ
おずおずと手を上げて部長の言葉を遮ったのは、またもAくん。
「そろそろみんなロードワークから帰ってくるから、部長は戻ってください。
俺は…
まだ練習に参加できないし。」
「…そうか?」
部長は心配そうにAくんを一瞥して…
取り出した鍵束の中から一つだけを外してAくんに手渡した。
「じゃあ、おまえに頼む。
…
悪ィ、な。」
部長の最後の呟きは、なんに対してのモノなのだろう。
きっと彼は、人一倍責任を感じている。
彼の決断が部員たちを危険に晒すおそれがあるのだから。
だが…
もうすぐに、結果は出る。
「ハイ、ハーイ。
じゃ、動きだそー。
部長は部活に戻った、戻った。
ヨコタさんとヒナは、ココでメール送っといてネー。
Aくん、案内ヨロシクー。」
「お… おぅ。」
「わかりました。」
「ハイ。」
由仁の軽い掛け声で、みんなが慌ただしく動き出す。