嗤うケダモノ

不服そうな視線を百合と交わした樹が、おもむろに口を開く。


「じゃあ、どんなコなら食べ飽きないンだ?」


「んー… えとねー…」


難しい顔で腕を組む樹。
興味津々といった様子で身を乗り出した百合。

二人に熱い視線を送られた由仁は、シャーペンのおしりで唇をなぞった。


「警戒心が強くて、逃げ足が速くて、捕獲レベルが高いコ。」


「「…」」


「捕まえても、尻尾をプルプル震わせてるクセに、虚勢張って噛みついてくるよーなウサギちゃんがイイよネー。」


「…捕獲レベル、ね。
おまえを『ペガサス(笑)』とか言ってるヤツらに聞かせてやりたいセリフだな。」


メガネの奥の目を細めた樹が、眉を下げてクスクス笑った。

見ると、百合まで横を向いて肩を震わせている。


「『ペガサス(笑)』言うな。」


由仁は不満げに口を尖らせた。


「男は狩猟本能の塊なの。
草食男子なんて幻想なの。
もしくは、狩りが怖くて草しか食えない臆病なヤロー共の言い訳なのっっ!」


随分な極論だな、おい。

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