嗤うケダモノ
亡くなったヨコタ先輩を騙って呪いをでっちあげたのはAくんだ。
どうしてそんなコトをする必要があるのかはわからないが、間違いなく彼の企みだ。
その企みを暴き、ブチ壊そうとする人間が現れたら、彼はどうするだろう。
謝る?
誤魔化す?
それとも…
青ざめた日向が唇を引き結んで立ち上がる。
その目の前に…
「ヒナちゃんは行くでない。」
風を纏わりつかせた空狐がフワリと現れた。
「オジーチャン!
見てたの?! 犯人はAだよ!
先輩が危ない!」
「わかっとる。
じゃが、由仁なら心配ない。」
空狐は満面に焦りの色を滲ませた日向を安心させるように、ゆっくりと語りかけた。
「由仁は幼い頃から古武道を嗜んでおる。
徒手空拳はもちろん、槍や薙刀もかなりの腕前じゃ。
…
そう言えばアレは、気功の類いじゃったンかの…
‥‥‥おや? ヒナちゃん?」
目を閉じ、生霊をブン殴った由仁を思い出していた空狐が視線を戻した時には、日向はもうソコにいなかった。
ついでに、部室の扉は大きく開け放たれていた。