嗤うケダモノ
「ハイハイ、わかったから。
とっとと課題終わらせて、狩りに出ような、ペガサス(偽)。」
シャーペンを握りしめて熱く語る由仁の左肩を、樹が叩いた。
「そーそー。
グズグスしてたら、ウサギちゃんが逃げちゃうわよ、ペガサス(偽)。」
続いて右肩を、百合が叩いた。
…
バカにしてやがりマスカ。
もー…
課題ヤる気、失せた。
や、元々なかったワケだから、マイナスになっちゃった。
シャーペンを投げ出した由仁が 机に突っ伏そうとした時…
教室のドアが静かに開いた。
「スミマセン。
久我 由仁先輩は、もう帰られましたか?」
よく通る高めの声と物怖じしない口ぶりに、由仁は顔を上げ、樹と百合は振り返った。
藤ヶ丘高校は歴史ある学校で、現在に至るまで男子は学ラン、女子はセーラーという校則を貫いている。
その今時古臭いとも言える黒地に白いラインとスカーフのセーラー服がよく似合う、清楚で凛然とした小柄な少女がそこにいた。
顎の下辺りから軽くレイヤーが入った、セミロングの黒髪。
小さいが、ぽってりした唇。
パッチリしたアーモンド型の目が印象的な少女に…