嗤うケダモノ

悲壮な決意表明を軽ーく遮った由仁を見て、Aくんは目を瞬かせた。

あ、日向サンもだネ。
パチパチしてるネ。

だってさー…

片付け優先なの?
報告&謝罪は後回しなの?

でもって、なんで今さら写真が出てくンの?

由仁は溜め息を一つ吐いた後、立ち尽くすAくんを強い眼差しで見据えた。


「『ごめーん、テヘペロ☆』で終わるワケないでショ?
君は、ついちゃいけない嘘をついたンだ。」


大きな身体をビクリと揺らしたAくんがさっきよりも蒼白になるが、由仁は止まらない。
薄い唇が、さらに厳しい言葉を紡ぎ続ける。


「謝って、どーなンの?
真実語って、どーなンの?
そんなの、ヨコタ先輩を慕う人たちをもっと傷つけるだけだ。

この嘘は、死ぬまでつき通せ。
嘘に嘘を重ねなきゃいけない事態になって、苦しむ日が来たとしても、墓場まで持って行け。

毒を食らわば皿まで。
ソレが男のケジメでショ?」


最後に由仁は世にも艶然と微笑んだ。

胸をつかれたように、Aくんが黙り込む。

嘘をつき続けて『真実』という夢を大切な人たちに与える。

ソレが、ついてはいけない嘘をついた者の責任。

ソレが、この男の言うケジメ。

< 238 / 498 >

この作品をシェア

pagetop