嗤うケダモノ
日向がココにやって来たのは、完全に誤算だった。
彼女はとても真っ直ぐな人。
こんなのは茶番だって、怒りだすカナ…
ゆっくりと振り向いた日向が、小さな唇を開く。
「こんな嘘、黙って見過ごせません。
…だから私も、加担します。」
「え… え?」
「元はといえば、私が先輩を引っ張りこんだンです。
先輩がAくんの共犯だって言うなら、私は先輩の共犯です。」
強い光を放つ日向の眼差しに囚われて、由仁は息を飲んだ。
あぁ…
こんな時ですら、その瞳に劣情を煽られる。
‥‥‥もう限界かもよ?
いやいや、待て待て。
そんな場合じゃねーから。
こんな汚れ役、女のコにゃさせらンねーでショ?
「ヒナ、ダメ」
「皆まで言うなぁぁ!
武士に二言なぁぁぁし!!」
由仁の言葉は、武士の力強い雄叫びに遮られた。
あー… そう?
女のコである前に、武士なの?
もう… 敵わねーなぁ。
気迫を漲らせて仁王立ちする日向から目を逸らした由仁は、口元を手で覆って笑いを堪えた。