嗤うケダモノ
共犯者たちは埃っぽい用具入れの中で偽装工作を進めていく。
黙々と畳を起こしていたAくんは、日向と額を突き合わせて段ボールを漁っている由仁の背中に視線を向けた。
「久我先輩…
色々スンマセンデシタ。」
「んー?
そんなコト言っても、手伝わないヨー?
俺、力仕事キラーい。」
振り返りもせずに彼が答える。
全く… 誰だよ。
この男が『ペガサス』だなんて言い出したバカは。
草食動物や愛玩動物なんて、とんだ見当違い。
彼は強い男だ。
鋭い牙を隠し持った、勝手気ままに生きるケダモノだ。
ナニモノにも囚われず。
ナニモノにも縛られず。
どこまでも自由に…
「俺… 好きですよ、柔道。
柔道部のみんなも。」
目の錯覚か、随分と広く見える背中にAくんは語りかける。
「だから…
周囲の目なんか気にせず、好きなようにしようと思います。」
やっぱり由仁は、興味なさげに ふーん、と生返事をするダケ。
けれど日向は、段ボールの中身に視線を落としたまま頬を緩めた。
『罵倒→改心』なんてルートも あったみたい。