嗤うケダモノ
しかし、時既に遅し。
身を翻そうとした日向の腕が、由仁にガッチリ掴まれた。
「嬉しーナー。
ヒナがそんなふうに思ってくれてたなんて。
今日は、俺ンちに寄って帰ろーネー?」
「え…
まままさか…」
ソレはアレか?
とうとう猛獣の檻に投入されるエサになっちまうのか?!
待って、ちょっと待って。
色々と心の準備ってモノが…
駐輪場に向かって引きずられながら、日向が焦った声を張り上げる。
「ちょ…
勘違いしねーでクダサイっ
嘘だから! 嘘ですからネ?!」
「えー? 嘘なのー?
じゃ、そんな口は急いで塞がなきゃ。
やっぱ俺ンち直行ー☆」
退路を絶たれた─────??!!
言葉を失って硬直する日向に、ヒョイとヘルメットを被せて。
さらにヒョイと持ち上げて、リアシートに乗っけて。
由仁は妖艶に微笑む。
「だいじょぶ、だいじょぶ。
まだ、ヒナが嫌がるよーなコトはしねェから。
…
たぶん、ネ。」
…
『まだ』ってナンダ。
『たぶん』ってナンナンダ。