嗤うケダモノ
さらに、その日の放課後。
「あれ?
今日は木崎さんは?」
由仁を訪ねてきたAくんが、オカ研部室を見回して言った。
なんつーか…
ゴメンね?
最後まで『Aくん』で。
最後までモブキャラ扱いで。
それはさておき、彼は見失っていた大切なコトを再び見出だしたようだ。
その証拠に、柔道着を身に纏っている。
呪いは消えた。
Aくんの呪縛も解けた。
だがやはり由仁は、そんなコトどーでもイイ様子。
クルリとチェアを回してAくんに向き合い、拗ねたように唇を尖らせた。
「君ンとこの女子マネに奪られたー。
クレープ食べに行くンだってさ。」
おや?
言葉のわりに…
「…
先輩、なんか嬉しそうデスケド?」
Aくんが怪訝そうに首を捻る。
由仁は目を見開いて。
それから、意識的に顔を顰めて…
やっぱり、緩んでしまう口元を隠せずに、ヘラっと笑った。
「エヘヘ、わかっちゃうー?」